【9月】月子弯弯照九州
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
弓なりのお月様が広い中国を照らしている。どれだけの家が楽しく過ごし、どれだけの家が憂いの中にあるのだろうか?どれだけの夫婦が共に過ごし、どれだけの人が故郷を離れ、外をさすらっているのだろうか?
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これは南宋時代、江蘇一帯において流行したといわれる民歌です。対比の手法を用いて、人々の凄惨で苦しい生活の様子を描き、ある側面から当時の社会の動乱と人々の苦難を映し出しています。
民間歌謡なので、現代の歌手が歌っているのをYou Tube などで聴くことができますが、詩の内容とは裏腹に長調の明るい感じのメロディで、ちょっと受ける印象は違うかもしれません。
でも、中国では常にそうした両面性というか、悲しいこと苦しいことをストレートに表さず、わざと明るくサラッと表現することで却ってその悲しみや苦しさを伝えるということはよく用いられる手法ですから、そのおかげでこうして今にも伝わっているのかもしれませんね。