【4月】江南春
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
見渡すかぎり広々と連なる平野の、あちらからもこちらからも、うぐいすの声が聞こえ、木々の緑が花の紅と映じ合っている。水辺の村や山沿いの村の酒屋の目印の旗が、春風になびいている。
一方、古都金陵には、南朝以来の寺院がたくさん立ち並び、その楼台が春雨の中に煙っている。
(石川忠久編『漢詩鑑賞事典』講談社学術文庫,2009年より)
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杜牧(803-852)は京兆万年(今の陝西省西安市)の人。828年進士に及第、エリート官僚としての第一歩を踏み出し、50歳で没しました。美男子で風流な貴公子とされ、晩唐第一の詩人です。江南地方の春を読み込んだこの詩は、前半は晴天の農村風景、後半は雨の古都のたたずまいであり、前半と後半では天候も背景も大きく異なりますが、タイトルの「江南の春」の通り、明るい農村の風景と懐古のムードが渾然一体となって、江南の春の情景を描き出しています。
杜牧の詩は、本当に美しく、風景がパーッと目に浮かび、キラリとしたセンスを感じさせてくれます。