【4月】清明
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
春の盛りの清明節だというのに、折からこぬか雨がしきりに降っている。その雨は、道行く旅人であるわたしの心をすっかり滅入らせてしまう。「すまんが、酒を売る店は、どちらの方にあるのかな」すると、牛飼いの子があっちの方だよ、と指さした。そのかなたには、白い杏の花咲く村が。
(石川忠久編『漢詩鑑賞事典』講談社学術文庫,2009年より)
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「清明」は季節を表す二十四節気の一つで、春分から十五日目、およひ陽暦の四月五日頃といわれます。中国では墓参りなどをしに野歩きをするのが習いで、ちょうど日本のお彼岸のような雰囲気です。今年は新型コロナウイルスの感染で、武漢をはじめ中国の人々が亡くなった方々をしのび頭を下げる映像がニュースで流れていました。この詩はそうした雰囲気は全く感じさせず、季節のみを切り取り、息吹きを感じさせてくれるステキな風景画となっています。亡くなった方々を悼みつつも、あらゆることを前向きに受け入れ生きていかなければと思います。