【7月】暁出浄慈寺送林子方
(『看図読古詩(修訂版)』, 金盾出版社, 1994年より)
【大意】
明け方に浄慈寺を出て林子方を見送る。何と言っても西湖は(夏の旧暦)六月の間は、風景は四季みな同じではない。天に連なるハスの葉は、極まりない緑色をしており、日光に照り映える蓮の花はことのほか赤い。
(「詩詞世界 碇豊長の詩詞」より)
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前月に続いて、西湖を詠んだ詩をもう一つ。 楊万里(1127~1206)の作。浄慈寺は現・浙江省杭州市西湖区の西湖南畔の南屏山の麓にある禅寺で、境内からの景観は西湖十景の一つとして「南屏晩鐘」と呼ばれています。林子方は友人の名で、作者と共に抗金の志を持った人物とされています。送別の詩ですが、師の中に特に送別の言葉はなく、風景を描くことで思いを述べています。 西湖の風景はどの季節でも美しいですが、初夏のハスの花が咲いた時は、まさにまた格別の美しさを具えていたと思われます。